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「1Q84」~[感想][あらすじ][解説]:村上春樹 

読書

はじめに

今回は村上春樹が書いた「1Q84」について私🍏なりに、あらすじ、感想、そして解説をしていきたいと思います。

村上春樹の作品は独特の文体で綴られており、初心者の方は読みにくいと思うかもしれませんが一度読むとクセになり気づいたら読みすすめてしまう魅力が村上文学にはあります。

今回ご紹介する「1Q84」はハードカバー3冊と長く、内容も神秘的で不思議な物語が綴られていますが、気が付いたら本をめくる手が止まらなくなっているので村上作品の中でもオススメの作品です。

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「1Q84」を読む前に

「1Q84」はジョージーオーウェルの書いた近未来小説「1984」を元ネタに書かれた近過去の小説です。

学生運動、宗教問題。日本がまさにカオスの世界に入ろうとしている時代背景。そして「1984」という作品はディストピアを描いた作品であり、ディストピアの世界とカオスな世界を並べて比較してこの作品を読むとより「1Q84」が楽しめるのではないでしょうか。

毎日新聞での村上春樹のインタビューもぜひ「1Q84」を楽しむ上で重要な要素だと思うのでご紹介させて頂きます。

「僕が今、一番恐ろしいと思うのは特定の主義主張による『精神的な囲い込み』のようなものです。多くの人は枠組みが必要で、それがなくなってしまうと耐えられない。オウム真理教は極端な例だけど、いろんな檻というか囲い込みがあって、そこに入ってしまうと下手すると抜けられなくなる」

「物語というのは、そういう『精神的な囲い込み』に対抗するものでなくてはいけない。目に見えることじゃないから難しいけど、いい物語は人の心を深く広くする。深く広い心というのは狭いところには入りたがらないものなんです」

ぜひこれらのことを頭に入れて「1Q84」を読んでみてください。

「1Q84」のあらすじ

20年前、小学校の教室で青豆と天悟は見つめ合いながら手を握り合う。

その後青豆は転校してしまうが、お互い思い合いながらも探すことなく20年の月日が流れる。

予備校で数学教師をしながら小説を書いている天悟は、ある日編集者の小松から新人賞に応募してきた「空気さなぎ」という作品のリライトを頼まれる。「空気さなぎ」の作者は「さきがけ」という宗教団体から逃げ出してきた謎の少女、ふかえりの書いたもので、天悟はふかえりのバックにある「さきがけ」という宗教団体、そして応募作品をリライトすることは世間を騙すこととなり面倒事に巻き込まれるのではないかと考え、最初はリライトする事をためらうが「空気さなぎ」という作品の不思議な魅力に魅せられリライトを行う。天悟がリライトしたことで「空気さなぎ」は爆発的に売れたが、しかしその結果「さきがけ」の組織に追われるようになりいつしか、自分が現実の世界とは違う月が2つある「1Q84」の世界に潜り込んでしまったことに気づく。

一方青豆はスポーツインスタラクターとして勤務するかたわら、DVによって女性を傷つけた男性を暗殺する仕事を引き受けていた。そして天悟同様に月が2つ存在する「1Q84」の世界に入り込んでしまっていることに気づく。その世界で「さきがけ」のリーダーが若い少女達に性的暴力を行っているという情報を手に入れリーダーの暗殺を行う。

2人は見えないところで「さきがけ」の事件に巻き込まれていき、見えないところで協力し悪に立ち向かう。そして20年の歳月を経て2人は再開を果たすことが出来るのか。村上春樹12作品目の長編。

1Q84のテーマ
芋粥
芋粥


孤独

「1Q84」はこんな人にオススメ

アラサー

青豆と天悟の共通点

小学校時代、二人は同級生でしたがよく話す仲ではありませんでした。

天悟は勉強が良くでき、数学の神童としてまわりから一目置かれる存在でした。一方青豆は家が「証人会」という宗教団体に属しており給食の前には祈りを大きな声で唱えなければならず、まわりは青豆を気味悪がり友達を作れるような状態ではありませんでした。

そんな2人ですが2人とも毎週休みになると親と一緒に街を歩かされるという共通点がありました。

青豆は「証人会」の布教活動の為、天悟は「NHK」の集金の為。どちらの両親も自分だけではなく子供を連れて行くことで、成果を上げやすいと判断したためです。

そのような生活を逃げ出すため、青豆は棄教し、天悟は家出をします。その結果2人は学生の頃から親に頼ることなく自分の力で生きる事となります。青豆はソフトボール、天悟は柔道、の選手として進学をします。2人は親の愛を受けることなく、いつか再会出来ることを願って特定の恋人を作ることなく孤独に人生を歩んでいました。

孤独について

「1Q84」を読む中で30才という年齢も一つ重要なポイントだと思います。青豆と天悟は30歳となり、20代が終わり若者とは言えない年齢に差し掛かります。

世の中には「中2病」という言葉がありますが派生語として「高2病」「大3病」とあるようです。意味はさておき、人間は年を取るにつれある型に陥いりやすい人間が多いのだとおもいます。背伸びして大人ぶってみたり、親元から離れて調子に乗ってみたり。そして30歳も同じようにある型にハマる人が多いと思います。「30病」の症状はふと人生に対して虚無感に陥いり、孤独を強く感じてしまう患者が多いと思います。

家庭を持ち、仕事により環境が変わり昔のように友人と話せなくなり、それを人間としての成長だと捉えることができず、孤独感を感じる。孤独感を感じながら通いなれた会社と自宅の往復。30才は無駄に自身の人生を振り返り、無駄に虚無感を感じやすい年代なのかもしれません。

とりわけ頼るべき家族や友人を持たない青豆・天悟は特に孤独を感じ自分の存在について考える描写が作中で多く出てきます。たとえ今から自分が遠くに行ったとしても悲しむべき恋人も家族も居なければ、大切にしているものもない。10代の頃この本を手にした時には青豆や天悟に共感しなかった言葉や行動が、アラサーになってから読むと共感してしまう場面が多くありました。

愛について

この作品は青豆の生活と天悟の生活が交互に描かれていますが、思い合う2人が合いそうで会えない場面に読者は焦らされます。たった一度、しかも小学校の頃一度手を握りあったというその出来事だけで思い合う2人。現実世界ではちょっと考えにくいこのロマンスですが、30病で孤独な生活を送っているこの2人だからこそこのロマンスは余計に輝きます。

学校を卒業し、家族、友人からも孤立し自身の家庭も持たない30才は30病を発症させます。

極端な主義主張を持つ「精神的な囲い込み」はその人を幸せにはしませんが、人間は適度な「精神的な囲い込み」は必要なんだと思います。それが仕事・家庭・趣味・宗教でもいいですが、なにか無いと私達は脆く崩れてしまいます。2人は特定の枠組みに入ることなく孤独に暮らしますが青豆は天悟を、天悟は青豆を「いつかきっと再会できる」と信じて生き続けたのです。

最後に

今回「1Q84」について私🍏なりに、あらすじ、感想、そして解説をしてみました。

村上春樹の作品を読むと「結局何が表現したかったのか」と思う人もいるかもしれません。

最後まで読んでも解明されない謎も多くあり、物語にサビや起承転結を求める方は物足りなく感じる方も多いかもしれません。社会現象になったあの当時なんとなく手に取った「1Q84」。もう一度手にとって読み返すと大人の上質なラブストリーが描かれているのでまだ読んだ事がない人もぜひ手にとって 読んでみてください。

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