はじめに
今回はフィリップディックの書いた「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」について書きたいと思います。
この作品は近未来を舞台にしており、世界大戦の影響で大気汚染が広がった地球では、動植物が地球で生きてゆくことが難しくなったため、多くの人類が火星への移住を余儀なくされています。
主人公のリックは火星から地球へ逃亡してきたアンドロイドを処理するハンターとして生活しています。しかしアンドロイドを処理していく中で、人間とアンドロイドの違いは何かと自問していきます。
「人間と機械の違いは何か」、という問題は今後人類が避けては通れない問題であり、この作品ではその問題へのヒントが描かれていると思います。
SF作品ですが普段SF作品を読まない人にもオススメ出来るメッセージ性の強い作品なので、読んだことが無い人は是非読んでみてください
人間と機械の違いは何かのポイントテーマ・魅力
・人間と機械の違いは何か
・感情移入
・8本の脚を持つ蜘蛛
「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」はこういう人にオススメ
SF作品が好きな人
これからSF作品を読もうとしている人
あらすじ
リックは火星から地球へ逃亡してきたアンドロイドを狩るハンターとして生活しており、上司からアンドロイドの殺害を命じられリックは次々とアンドロイドを処理していく。
しかしアンドロイドを殺害していく中で、アンドロイドと人間の違いはなにか、そもそもアンドロイドを殺害する事を間違った事じゃないかと考えるようになる。
社会的ステータス
この世界では科学技術の発達や世界大戦の影響で現代とは違う価値観、文化が形成されています。
ムードオルガンという装置のダイヤルをまわすと、そのダイヤル事に設定された感情を抱く事ができます。ムードオルガンを使えば楽しい気分や平和な気分、テレビを見る気分など自分の感情をコントロールする事が出来るのです。
そしてこの作品の重要なテーマにもかかってきますが、作品内の人類は異様なまでにペットを大切にしており、動物達は非常に高値で売買されています。
世界大戦の影響で多くの動物が絶滅し希少価値が増しているのもありますが、ペットを持っていると言うことがこの時代では大きなステータスとなっています。
そのため周りから動物を飼っているという見栄を張るためにロボットの動物を買っている人間も多く存在しますし、主人公のリックは電気羊を買っています。
私達人間は見栄の為に高価な車、家、装飾品を集めますが、実際そのものには興味がなく、私達は希少価値が高く高価な物を持っている自分に興味があるだけかもしれません。
ステータスというのは時代によって変化するものであり、それにこだわるのは時代に振り回されているだけなのかもしれません。
人間とアンドロイドの違いとは
この作品を読み私はアンドロイドと人間の違いは感情移入が出来るかどうかだと感じました。
「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」の世界ではアンドロイドと人間を区別する際にハンター側がアンドロイドと疑われている人物へいくつか質問をします。
その質問の多くが動物の命を殺めた場合の反応をみており、そこで無反応の場合だとアンドロイドと判定されます。
例えば誕生日プレゼントとして子牛革の札入れを貰った、という質問に対し反応しない場合はアンドロイドと認定され処理されてしまいます。
現代で生活をしている多くの人は、仮にこの世界で暮していればアンドロイドと認定され処理されてしまうでしょう。
私はこのシーンを読み人間はその時代の価値観に反した価値観を持つものは排除する動物なのだと改めて思いました。
8体のアンドロイド
リックは地球へ逃亡してきた8体のアンドロイのうち6体を処理しますがこの8という数字もポイントになってきます。
リックに処理され残り3体になったアンドロイド達は、マル特という人間ではあるが知能テストに落第し同じ人間から避けられているイジドアと共に廃墟のビルに隠れます。
その廃墟ビルでアンドロイドの1体が8本の足を持つ蜘蛛を見つけ、そんなに足がなくても不自由しないだろう、とその足を抜いていきます。
8体のアンドロイドと8本の足を持つ蜘蛛、この8という数字にメッセージ性を感じます。
フィリップディックはこの8本の蜘蛛と8体のアンドロイドでアンドロイド達は人間と異なり、協力することができない、というのを描いていると思いました。
本当の人間らしさとは
あまりにも精密に作られたアンドロイドは人間と区別するのが難しくハンターはテストを行いアンドロイドと人間を区別します。
作中では主人公のリックが自分自身アンドロイドではないかと自分自身を疑う場面も出てきます。
人間とアンドロイドとの違いは感情移入出来るかどうか、だと先ほど書かせて頂きました。
感情移入という言葉をあえて言い換えるなら、他人の立場に立ち物事を考えられるか、だと思います。
アンドロイド達は仲間がリックに処理されても悲しむことはありません。
しかし、リックを含む人間達も自分ではない誰かを思いやるという感情が無くなっています。
この作品では人間の登場人物でさえもアンドロイドではないかと疑ってしまうほどどこか無感情に感じました。
作品で一番人間らしい人間は知能テストに落ちた周りから隅に追いやられているイジドアです。
科学技術の発達の結果、我々人間は人間らしさという大事な物を失い始めているのかもしれません
最後に
今回は私なりに「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」について、あらすじ、感想、解説を書いて見ました。
「人間と機械の違いは何か」という今後人間にとって避けては通れない問題について描いた作品で、今だからこそ再度読み返されるべき名作だと思います。
是非手にとって読んでみてください。
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