はじめに
今回は芥川龍之介が書いた「あばばばば」について、あらすじ、感想、そして私なりに解説をしていきたいと思います。
今回ご紹介する「あばばばば」という作品は、小さなお店に勤めている、はにかみやすい一人の女性が母親になった時に訪れる彼女の変化と成長を描いた作品です。
とても平和で幸福感に満ち溢れている芥川龍之介の短編小説だと思います。
ぜひ一度手に取って読んでみてください
「あばばばば」のテーマ、魅力、キーワード
娘から母親へ
ユニークな文章
「あばばば」はこんな人におすすめ
子供を授かろうとしている人達
あらすじ
保吉はタバコやココアを買うために無愛想な主人が経営している店によく通っていた。
店では無愛想な主人と若い小僧の二人で経営しており、保吉は通いながら代わり映えしない生活に退屈さを感じていた。
そんなある時店に行くと店頭には主人ではなく髪を西洋髪に結った女性が立っていた。
その女性は保吉が朝日をくれといって誤って三笠を出すなど、商品の聞き間違いや出し間違いが多く、その度に頬を赤くしていた。保吉はその様子を見て人慣れていない彼女に好感を持ち始めていた。
しかし、ある時から女性が店先に立たなくなり保吉もある種物足りなさを感じながら店に通っていた。
約3か月後店にいくと女性が「あばばばば」と面白そうな声をあげて赤子をあやしていた。
その直後女性と目が合った保吉は彼女の顔が赤くなるのを予想したが、彼女はさらに「あばばばばばば、ばあ」と声をあげて赤子をあやし続けた
母親
この作品では、はにかみがちの女性からたくましい母親に成長する様子が描かれています
商品の出し間違い、聞き間違いだけで顔が赤くなる娘だった女性が母親になり、自分の子供をあやすために人前で奇声じみた声をきかれても動じなくなくなった彼女は
とてもたくましい母親となって描かれています。
平和で小さな店で新たな生命を授かり成長する女性。
素朴な世界観の中で描かれる作品は読んでいてとても安らかな気分にさせてくれます。
そして最後に保吉がその姿をみて少し切ない気持ちになっているのも、この作品のポイントだと思います。
保吉はこの女性とはただの店員と客という関係ですが、店での会話のなかで自分が女性にこういう返答をすれば、女性はこんな反応をとり困り赤面するであろう、という少しイジワルな場面も描かれています。
それは女性を嫌いというのではなく、女性が人慣れてなく、汚れのない純粋な精神を持つゆえに、保吉のから生まれた好意だと思います。
しかし、そのような女性が一人の母親となると、赤面を予想した場面でも母親として動じない姿をみると嬉しいようで少し切ないような感情を抱いています。
ユニークな文章
また小さな店内での会話を芥川龍之介がとてもユニークな文章で描かれています。
その一文を抜粋いたします。
「保吉は女と目を合せた刹那せつなに突然悪魔の乗り移るのを感じた。(略)
猫に似た女の為に魂を悪魔に売り渡すのはどうも少し考へものである。
保吉は吸ひかけた煙草と一しよに、乗り移つた悪魔を抛はふり出した。
不意を食くらつた悪魔はとんぼ返る拍子に小僧の鼻の穴へ飛びこんだのであらう。小僧は首を縮めるが早いか、つづけさまに大きい嚏くさめをした。」
ユニークであり少しアニメチックな文章で店内の様子が描かれています。
「あばばばば」という作品は何気ない日常を描いますが、読んでいると文章がユニークであり、どこか時間がゆっくり流れているような印象を読者に与えます。
最後に
今回は芥川龍之介が書いた「あばばばば」について簡単ですが、あらすじ、感想、そして私なりに解説をしてみました
この作品では母親になった女性の成長を描いており、読むと安らかな気分にさせてくれます。
芥川龍之介は羅生門や地獄変のような暗い作品がありますが、この作品は「蜜柑」のような素朴で温かい作品となっています。
「蜜柑」~人生の素朴な美しさを描いた:芥川龍之介 「感想」「あらすじ」「解説」
「羅生門」〜人は生きる為なら罪をおかしてもいいのか〜:芥川龍之介 [感想][あらすじ][解説]
芥川龍之介は「あばばばば」のように素朴な物語を書かせたら本当に美しい物語を書く作家だと思います。
今回ご紹介した「あばばばば」は数ページの短編小説なので
是非手に取って読んでみてください
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