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「砂の女」~「感想」「あらすじ」「解説」:安部公房

読書

今回は安部公房が書いた砂の女、について私なりに簡単に、あらすじ、感想、解説をしていきたいと思います。

砂の女は安部公房の代表作品であり日本だけでなく海外でも高い評価を受けている作品です。

ある高校教師の男は趣味の昆虫採集のため砂漠を訪れたさいに、現地の村人に騙され砂漠に閉じ込められ元の生活に戻れなくなります。

男は反発しながらも、今までの生活と、砂漠での生活を比べていくうちに人生の幸福と自由について考えるようになります

まだ読んだことがない人はぜひ手に取ってよんでみてください

砂の女のポイントテーマ・キーワード・魅力

芋粥
芋粥

・競争

・流動

・自由

・人生の幸福

砂の女はこんな人にオススメ

物質至上主義の世界に疲れた人

今の世界に疲れた人

自由について考えたい人

あらすじ

珍しい昆虫採集の為に連休を取り、町外れの砂丘を訪れた男は、そこに住む老人に砂の壁に囲まれた宿を紹介してもらう。

翌日砂の壁を登り帰ろうとすると、壁を登るための縄梯子が故意に取り外れており男は、砂丘から出られなくなる。

男は不条理な砂漠での生活と老人を含む組織に反発を覚えるが、一緒に住む女と生活していくうちに、脱出の事は忘れ、砂漠での生活に順応していく

競争社会

昆虫採集が趣味である男は、新種の虫を見つける為に、他の生物が生きるのは難しい環境に生息している変種を求め砂丘に向かいます。

男が求めているハンミョウという蝿は獲物を見つけると、砂漠まで誘い出して獲物が飢え死にさせるという特色を持っています。

獲物を多く取るのであれば、砂丘ではなく植物が多くいる場所が好ましいですが、競争に敗れたハンミョウは獲物が少ない砂丘に追いやられ珍しい変種として生存しています。

砂漠の女では、小動物ではなくまさに主人公の男がこのハンミョウに砂漠まで誘い出され、砂漠に閉じ込められている構図が非常に皮肉がきいており面白いです。

また砂漠の女を読む際に

砂漠の世界と、男がかつて生活していた現代の世界、この2つの世界を並べ比較する事は凄く重要だと思います。

例えば現代の世界では競争や成長に溢れていますが、砂漠の世界では一切競争はなく、むしろハンミョウのように競争社会に敗れた、疲れた人達が集っているように思います。

責任や、義務、世間体も砂漠の世界ではありません。一定の砂かきの労働はありますが、最低限の労働さえしとけば組織から水が支給され生活していくことが可能です。

人類にとって競争や成長は素晴らしい響きをもって使われていますが、一度その世界から離れ、砂漠の世界から、今の世界を除くと人類にとっての本当の幸福とは何かを考えさせられます。

自分が住むべき世界

砂漠の女は読む度に色々と考えさせられますが私は読み返す度に、男が女にたいして話した、ある長男の農家が家出をしたというエピソードの女の返しに心が動かされます

「それで、その跡取り息子のほうは、それからどうなりました?」

「どうって、そりゃ、あらかじめ計画的にやっておいたことだし、就職先ぐらい、前もって決めておいただろうさ。」

「それで・・・・・・?」

「だから、そこに勤めたんだろう・・・・・・」

「それで、その後・・・・・・」

「その後って、まあ給料日になれば給金をもらうだろうし、日曜日には、シャツを着替えて、映画にでも行ったりしただろうな。」

「それから?」

「そんなこと、直接本人に聞いてみなけりゃ、分りゃしないよ!」

「やっぱり、貯金がたまったら、ラジオを買ったりしたんでしょうねえ・・・・・・」

男は毎日砂かきしても、次の日には元に戻り全く前に進まない砂漠の世界に嫌気がさしており、彼にとって脱出し元の世界に戻る事が全てでした。

しかしこの農家のエピソードに対する女の返しを聞いたとき、たとえ戻ったとしても、砂かきのように毎日の生活が待っている、と言うことに男と読者は気付かされます。

つまり、今の世界が嫌になりどこかへ逃げても私達はその新しい世界でまた別の役割を与えられ、何かしらの労働や義務を背負わされる、という事です。

言い換えれば逃げ出したとしても、桃源郷が待っているわけではない、たいして変わらない現実が待っているという事です。

ネガティブなメッセージかもしれないですがこの単調で面白くない世界を受け入れたうえでそこで何を大切にするのかが大事なんだと思います。

男は砂漠の世界と元の世界と比べ、最後は女との子供を授かり砂漠の世界で生きていくことを決めます。

さいごに

今回は安部公房が書いた砂の女、について私なりにですが簡単に、あらすじ、感想、解説をさせて頂きました。

不条理に砂漠の世界に閉じ込められた主人公を通して私達にとって成長、自由とは何かを考えさせられ、今の世界から逃げ出したい人ほど刺さる作品だと思います。

まだ読んだことがない人は是非手にとって読んでみて下さい

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