芥川龍之介『芋粥』|夢を叶えられてしまった男の哀しい結末【感想・あらすじ】

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はじめに

「もし、あなたの夢が突然叶えられてしまったら、本当に幸せになれるでしょうか?」

今回ご紹介する芥川龍之介の短編『芋粥(いもがゆ)』は、そんな問いを私たちに静かに突きつける物語です。

芥川作品の中でも特に好きな『芋粥』について、あらすじ・感想・解説を簡単にご紹介していきます。

この短編作品は平安時代の冴えない貴族を主人公として描かれています。

主人公の冴えない貴族は女房から逃げられ周りの貴族からはいじめられ、子供達からも笑われるような人間です。

そんな彼の唯一の生きる目的は、
「芋粥を飽きるほど食べること」でした。

ある日他の貴族から芋粥をご馳走してやる、と声をかけられ、冴えない貴族は長年の夢を叶える機会を迎えます。

物語は至極単純で、芋粥如きに大袈裟だと思われる方もいるかもしれませんが、物語を最後まで読むとスッと胸に落ちる作品だと思います。

短編作品なので普段本をあまり読まない人にもオススメできる作品です。

自分が何一つ努力せずに夢を他人に叶えられてしまったらあなたの心はどんな感情を抱くでしょうか。

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芋粥はこんな人にオススメ

普段あまり本を読まない人

芥川龍之介作品に興味がある人

生きる目的を探している人

芋粥のポイントテーマ・キーワード・魅力

テーマ

芋粥
芋粥

夢を持つこと

夢の叶え方

あらすじ

平安時代の某という冴えない五位は、周囲の貴族からいつも笑いものにされていた。

そんな冴えない彼だが、饗宴の残り物で出される芋粥を飽きるほど食べてみたい、という強い願いを抱いていた。

ある日その願いを知った武将・藤原利仁は

「今度芋粥をたらふく食わせてやる」と五位を誘った。

周囲の貴族はいつものように、それをからかい五位を笑っていたが、五位は芋粥への欲に負け利仁についていき芋粥をご馳走してもらうことになった。

利仁に振り回されながらも京都からはるばる敦賀までたどり着いた五位はついに大鍋に沢山入った芋粥を目の前にしたが、五位は不思議と食べる気をなくしてしまった。

生きる目的

芋粥の最大のテーマは生きる目的を持つことの幸せと、その夢の叶え方の重要性を教えてくれることだと思います。

物語の前半では、五位の冴えない生活が描かれています。読んでいると本当に哀れで、情けなくなるほどです。
周囲の貴族からは笑いものにされ、犬をいじめている子供を注意すれば、逆にその子供からもバカにされてしまいます。

読んでいるとこの人は生きていて楽しいことがあるのかと思ってしまいますが、彼の唯一生きる目的は芋粥をたらふく食べることが彼の夢であり人生の希望だったのです。

しかし物語終盤で彼はあれほど求めていた芋粥を前にして吐きそうになります。そしていつも残飯のお椀のそこの数滴の芋粥を楽しんでいた過去の自分を幸福だったと回想します。

私はここの描写を読み、私達人間は叶いそうで叶わない時が1番幸福であり1番人生を楽しめる状態なのではないかと思います。

しかも彼の芋粥をたらふく食べるという夢は、自分の努力ではなく利仁という他人によって簡単にあっけなく叶ってしまいます。

そこには達成感というものは無く、夢が叶ったとしても充足感というような感覚は無かったかもしれません。

もし彼が本気で血の滲むような努力した上での芋粥なら、その芋粥の味は格別だったのではないでしょうか。

五位の夢設定と彼の性格

夢を持つことの幸福。

このようなテーマであれば、貧民から王様に成り上がることを夢見る男を主人公にしても物語として作れそうですが、芥川はあえて、冴えない五位を主人公としています。

彼の夢を貴族社会で成り上がる人物、というのではなく「芋粥を飽きるほど食べたい」という素朴な夢にしていることで、深いテーマでありながら非常に読者にとって彼が身近な存在であると感じさせています。

大きな夢、野望を掲げている主人公よりも、五位のような素朴な夢を持っている方が読んでいて私達は共感することができます。

それに加えて、五位の人物像も私達にとって自然に共感できる人物像となっています。

五位の生活は冴えないもので読んでいて情けない気持ちになりますが、それは自分のどこかに五位のような”ダサい”部分を持っているために情けないと感じてしまうのではないでしょうか。

五位の素朴な夢とダサい人物像は私達にとって合い通じるものがあり、だからこそ物語をより身近に感じ、魅力的にしているのではないでしょうか

最後に

今回は芥川龍之介が書いた芋粥について私なりに簡単に、あらすじ、感想、解説をしてみました。

夢を持ちその夢を叶えるために努力してついに達成する──そんな物語は多くあります。

しかし『芋粥』では、夢を他人の力によってあっけなく叶えられたとき、人間はどんな感情を抱くのか、というテーマが描かれています。

例えばゲームの中にどうしても倒せないボスが現れたとき。

私達はどうしたらボスが倒せるのかを考えます。レベルを上げたり、パーティー構成を考えたり、より強いアイテムや武器を探します。

しかしゲームの上手い友人がやってきてサクッとボスを倒されるとさっきまで面白かったゲームが急に味気なくなります。

また『芋粥』を読んでいると、夢は叶うかどうかよりも、持ち続けること自体に意味があるのだと気づかされます。

芋粥の中には素敵な文章が多くありますが

最後に私の1番好きな文章を紹介させて頂きます

「人間は、時として、充たされるか充たされないか、わからない欲望のために、一生を捧げてしまう。その愚を哂う者は、畢竟、人生に対する路傍の人に過ぎない」

この文章は人間の愚かさを表現していながら、人間の面白さが表現されている文章だと思います。

夢を持つことの尊さを静かに教えてくれる、深く味わいのある作品です

ぜひ手に取って読んでみてください

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