
はじめに
今回は宮崎駿の「風の谷のナウシカ」について書きたいと思います。
「ナウシカ」といえば金曜ロードショウで誰もが見たことが有る作品だと思います。
今回の記事ではアニメではなく漫画版について書きます。内容がとても深く、難解な内容ですが宮崎駿の描きたかった、伝えたかったものが描かれていると思います。
漫画は全7巻ですが、アニメで描かれているのは7巻中2巻くらいですので、ナウシカが好きでまだ漫画版を読んでいない方は是非手に取って見てください。
ただ今回の記事をみるとネタバレになってしまうところも御座いますのでそこはご容赦ください。
あらすじ
生命体を意のままに造り変えるほどの高度に発達した技術を手に入れた人類は巨大産業文明を形成し発展を続けていた。
しかし「火の7日間」と呼ばれる戦争によって都市群は有害物質をまき散らし崩壊し、高度化した技術体系までも失われてしまった。大地は腐海につつまれ人類は腐海と虫におびえ生活をしていた。
そのような状況の中でトメルキアと土鬼との戦争が勃発しようとしていた。
ナウシカから読み取れる様々なテーマ
冒頭にも申しあげたとおりにこの漫画は非常に内容が深く、登場人物同士の思惑が複雑に絡み合い難解な内容です。
「人類と戦争」、「人類の進化とは」、取り上げるべきテーマは数多くありそのどれもが宮崎駿が人類に対しての警鐘を鳴らしたものだと思います。
高度に発達した人類は大規模な戦争を行い、自然環境や今まで築いてきた技術体系を壊したにも関わらず再び戦争を始めようとしている人類。
戦争中では生者が死者を羨むような残酷で見るに堪えない出来事が多く描かれています。
幼い子供が人質となったり、他国へ人身売買の商品とされたり敵国だけなく、仲間同士で権力争いが行われ、圧倒的に不利な戦地送り込まれ軽々しく命が捨てられていきます。
自分とは違った言葉、風習、宗教を持つものを疑い、差別し、攻撃の標的とする人類。
欲深く、猜疑心が強く、歴史や過去から何も学ぼうとしない人類。
そのような状況の中でナウシカはオームに「友愛」の精神を教わり「友愛」の精神で世界を変えようと動きます。
この世界は他人事ではないように思います。
進化欲に狂った人類による技術発達。それに伴う環境破壊。技術的には発達したかもしれないが、精神的には発達できていない人類はいまだに人種差別が問題になっています。
第一次、第二次世界大戦を経験したのにも関わらず醜い欲の為に第三次世界大戦がいつ起きてもおかしくない状況。古い偉人が隣人を愛しなさいと私たちに伝えてから何年たったのでしょうか。
学校では他人を思いやりましょう、とどの学校でも習います。
それでも学ばない欲深く、おろかな人類は争いを続けていきます。
私🍏も含め人類は同じ過ちを繰り返し続ける生き物なのでしょうか
芋粥🍏ポイント(※ここからネタバレ入ります)
様々なテーマがある中で最大のテーマは「生命とは何か」だと思います。
物語終盤からナウシカは先代の人類が残した秘密を知ることとなります。
それは「腐海は人類が人工的に作り出した」という事実です。
ナウシカの時代では腐海は先の大戦の結果生じた有毒物質だと考えられていましたが、そうではなく人類を1度リセットする為に人工的に作り出した有毒物質だったのです。
腐海を作り出すことで人類を緩慢に滅ぼし、そして人類のいなくなった後、腐海は大気汚染を浄化する役割を担っていたという事実です。
先の大戦中に絶望の淵にあった人類は当時の英知を集め新たな生態系を作り、生命体を、人類を造り変えようとしたのです。
これをナウシカは「生命への最大の侮蔑」だと否定します。
「清浄と汚濁こそ生命」だと主張するのです。いくら人類をリセットし清浄な世界を実現したとしても
人間の一部である苦しみや悲劇、醜い争いはなくならない。ただ、世界に汚濁があるからこそ人生の喜び、美しさを知ることができる。それが人間なのだと。
作中で人類は確かに醜い争いを続けていますが、苦しい中だからこそ仲間や、他人を思いやり助け合いながら生きている登場人物達をみると、そこに人間の美しさを見ることができます。
ナウシカの大切にしている「友愛」という感情は闇から生まれるのでないでしょうか。
どんなに高度な文明を形成できたとしても人類は欲深く、同じ過ちを繰り返してしまうおろかなで未熟な生き物かもしれない、だからこそ生命は美しい。
ラストの先の人類とナウシカとの対話は何回読んでも考えさせられるのですが
そこでのナウシカのセリフに「私達は血を吐きつつくり返しくり返しその朝をこえて飛ぶ鳥だ」
そしてこの深い深い作品の最後にナウシカは人類にこういう言葉を優しく投げかけます。
「さあみんな出発しましょう、どんなに苦しくとも生きねば・・・」
決してハッピーエンドな作品ではありません。
私達人類は醜い生き物だと受け入れたうえで、血を吐きながら、もがきながら必死で生かなければならない。
私🍏はこの作品を読むたびにこのキツイ人生を生き抜く勇気をもらいます。
人生は一切皆苦です。必死で生きねば・・・
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