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「畜犬談」〜[感想][あらすじ][解説][考察]:太宰治 

読書

はじめに

今回は太宰治の「畜犬談」について私🍏なりに、あらすじ、感想、そして解説をしていきたいと思います。

この作品は犬が怖くてしょうがない主人公が、犬を避けるように行動した結果何故か犬に好かれて困ってしまうお話です。

非常にユーモラスに溢れた作品で下手なギャグ漫画より爆笑して読める太宰作品だと思います。

畜犬談のテーマ

芋粥
芋粥

弱者
太宰の文学

「畜犬談」はこんな人におすすめ

・動物が苦手な人
・初めて太宰治を読む人

あらすじ

犬に過度の恐怖を抱いて生活を送っていた私は犬を避けて生活を送っていたが、逆に犬に好かれてしまい、渋々飼う事となる。そんなある日その犬が皮膚病にかかり、悪臭を放つようになり我慢できなくなった私は犬の毒殺を試みる…

太宰治のお笑い

最初でも述べた通りこの本は非常にユーモラスに溢れています。そんな冒頭1文を紹介します

私は、犬については自信がある。いつの日か、かならず喰くいつかれるであろうという自信である。私は、きっと噛かまれるにちがいない。自信があるのである。よくぞ、きょうまで喰いつかれもせず無事に過してきたものだと不思議な気さえしているのである。諸君、犬は猛獣である。

この書き出しで分かる通りこの作品の最大の魅力は太宰治のユーモラスさが全面に出ている点だと思います。

大の大人が犬に対して過剰なまでに怯え、恐怖を抱いて真面目に分析している様子は読んでいて非常に面白いですし、犬を避けた結果犬に好かれ地団駄を踏む主人公を読んでいると笑ってしまいます。

そして住み着かれたあと、嫌い嫌いと言いながら散歩に連れて行き、姿が見えないと奥さんに場所を訪ねる様子は非常に微笑ましいです。

太宰治の笑いの哲学である、「ダサ面白い」が表現されているので、太宰治を読んだことが無い人や、これから読もうかと考えている人にオススメです

犬と私

犬と過ごすようになっても私は益々犬が嫌いになります。

出かけると犬も付いてきて一緒に散歩をするようになりますが、この犬の胴は長く伸びるわりに手足が短くまるで亀を連れ歩いているように見え、散歩中、少年少女から指をさされて笑われてしまい見栄っ張りの私は益々犬が嫌になります。

さらにこの犬は喧嘩好きで相手の図体を気にせず喧嘩をふっかけ一度は仔牛のような犬に喧嘩をしかけ、命を失いかけたこともあります。

争い事が嫌いな飼い主の私は犬に「喧嘩しては、いけないよ。喧嘩するなら、僕からはるか離れたところで、してもらいたい。僕は、おまえを好いてはいないんだ」と言い放ちます。

私の言葉が伝わったのかそれ以来犬は喧嘩をさけるようになり、往来で他の犬が吠えてきても「ああ、いやだ、いやだ。野蛮ですねえ」というような顔をして私に気に入られようとおべっかを使うようになります。

飼い主の私に気に入らようとする犬の態度は可愛らしいと思いますが、私はただ顔色を伺っている嫌な奴として飼い主である自分に似てきたと思いさらに嫌いになります。

つまり犬=自分という構図が出てきて、自分の嫌な所をうつしだす鏡になったのでしょう

犬の毒殺と私の変化

家の引越しと犬の皮膚病もあり犬を毒殺することにした私は毒入りの牛肉を持って犬を散歩に誘います。

皮膚病を患ってから散歩も一緒に行かなくなっていたので犬は今から毒殺されるとも知らず大喜びでついてきます。

散歩の道中、犬は赤犬に喧嘩をふっかけられますが、上品な態度を装いすまし顔で前を通り過ぎます。

すると赤犬は後ろから犬を襲ってきたので犬はとっさにくるりと反転しますが、例のごとく私の顔色を伺います。すると私は「赤犬は卑怯だ!思う存分やれ!」と命令します。戦いのすえ、犬は赤犬を追い払うことに成功します。

いままでのケンカであれば私は蔑むような視線で犬をみていますがその時は共に死ぬような気持ちで犬を応援し手に汗を握り勝利した犬に「よし!強いぞ。」と褒めるのです。

そして最後に毒入りの牛肉を犬の足元に落とした私は苦しむ犬を見ることが出来ず、下を向いてトボトボ帰宅をします。

しかし毒は犬に効かず結果的に犬は死にませんでした。生き延びた犬を見て私は妻にこう言います

「だめだよ。薬が効かないのだ。ゆるしてやろうよ。あいつには、罪がなかったんだぜ。芸術家は、もともと弱い者の味方だったはずなんだ」「弱者の友なんだ。芸術家にとって、これが出発で、また最高の目的なんだ。こんな単純なこと、僕は忘れていた。僕だけじゃない。みんなが、忘れているんだ。僕は、ポチを東京へ連れてゆこうと思うよ。友がもしポチの恰好かっこうを笑ったら、ぶん殴なぐってやる。卵あるかい?」

「ええ」家内は、浮かぬ顔をしていた。

「ポチにやれ、二つあるなら、二つやれ。おまえも我慢しろ。皮膚病なんてのは、すぐなおるよ」

なぜ、私はこのような心境の変化が生まれたのでしょうか。

私 は最後のこの場面を呼んでこの本をただ単に犬嫌いな男を面白可笑しく描いた本として読むのは勿体無いなと思いました。

この本には太宰の小説家としての強いメッセージが描かれていると思いました。

犬=弱者という構図ですが、弱者は犬だけではありません。

この世の中には残念ながら多くの弱者が存在します。貧乏人・重い病気を患っている人・社会に馴染めない人。例をあげたらキリがありません。

この最後のセリフで太宰は芸術家として自身の文学で弱者を救いたいという思いを表現したかったのではないのでしょうか

最後に

今回は太宰治の「畜犬談」について私🍏なりに、あらすじ、感想、そして解説をしてみました。

太宰の笑いのエッセンスと芸術家としての熱い想いが表現されている一冊です。内容も非常に読みやすく、太宰入門にぴったりな短編小説だと思いますので是非読んでみてください。

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