はじめに
今回は川端康成の書いた「バッタと鈴虫」について私🍏なりに、あらすじ、感想、そして解説をしていきたいと思います。
雪国が有名な川端康成ですが、他にも素晴らしい短編作品が多くありますので、この記事を呼んで川端康成に興味を持っていただけたら嬉しいです。
バッタと鈴虫のテーマ・魅力・こんな人にオススメ
「バッタと鈴虫」はこんな人におすすめ
・人生に少し疲れた人 ・癒されたい人
あらすじ
男が夜散歩をしていると、草むらで虫取りをしている子供達をみつける。よくみると子供達は夜の暗闇を照らすために、店に置いてある出来合いの提灯ではなく自作した提灯で暗闇を鮮やかに照らしている。
すると虫取りをしている男の子の1人が「誰かバッタ欲しい物いないか。バッタ!」と叫び、その声を聞いた子供達が男の子に群がるが、男の子は虫を渡さないばかりか、虫を隠す。
再び男の子が離れて虫を取っている別のグループにむかって「誰かバッタ欲しい物いないか。バッタ!」と叫ぶ。すると新しく近寄ってきた女の子が「頂戴な。頂戴」というと男の子は「バッタだよ」と言いながら鈴虫を渡す。バッタと思っていた女の子は目を輝かして、明るい知恵を持った目で男の子をみる。
男はこの時男の子の意図を理解すると同時に、自作した提灯から浮かび上がっている男の子名前が女の子の胸に、女の子の名前は男の子の腰に映し出されている事に気づき、この光の戯れを男の子自身が思い出すすべを持っていない事を残念に思う。
世界観の美しさ
バッタと鈴虫の魅力はなんといっても文章の美しさと、川端康成の作り出す世界観の美しさだと思います。
特に私は物語の入り方が非常にスマートというのもバッタと鈴虫の魅力の1つだと思っています。
男が夜散歩をしていると草むらで子供達が自作の提灯で暗闇を照らしながら虫を採る様子を見て男はこの景色が出来るまでには一つの童話が無ければならないと、自身の想像を膨らませ、どのような経緯がありこの草むらに子供達が集まり、どのように子供たちが店の提灯ではなく、わざわざ自分達で提灯を自作するようになったのかという経緯を男の妄想から物語が描かれていきます。
この入り方と、当事者ではない男が1つの情景を見てそこから物語が展開されていく構成がとてもオシャレです。
そして、色鮮やかな提灯が草むらを照らす様子を川端康成が美しく表現しておりその世界の美しさで読者は物語に引き込まれていきます
川端康成作品は代表作雪国をはじめその文書の美しさ、言葉選びで読者を世界観に没入さしてくれる魅力があるように感じます。
このバッタと鈴虫も読んでいると草むらが色鮮やかに提灯で照らされている情景が浮かび上がり読者はその美しい世界観に引き込まれてしまいます。
少年少女達の知恵
男の子がバッタを取り周りに「誰かバッタ欲しい物いないか。バッタ!」と叫び注目を集めながらも周りに子供達が近寄ってきたのにも関わらず、逆に虫を隠し、もう一度と離れたグループに「誰かバッタ欲しい物いないか。バッタ!」と叫び近寄ってきた女の子に「バッタだよ」といって鈴虫を渡しますが、この早熟な男の子の意図に少し憎たらしさと微笑ましさを感じます。女の子も女の子で男の意図を理解し明るい知恵をもって男の子を見ます。
色鮮やかな提灯に照らし出されている草むらを舞台に少年少女の爽やかな恋愛模様が表現されています。
さらに二人で顔を近づけあいながら鈴虫を見た時、提灯から写し出された自分の名前が相手の胸・腰に写し出されている構成は本当にオシャレだと感じます。
この数ページの短編作品でここまで読者を世界観に引き込み、ここまでの美しさを表現されている作品は多くはないので、ぜひ読んでみることをお勧めします。
男の思い
男は物語の最期にこんなことを言っています。
不二夫少年よ!君が青年の目を迎えた時にも、女に「バッタだよ。」と言って鈴虫を与え女が「あら!」と喜ぶのをみて会心の笑みを漏らし給え。そして又「鈴虫だよ」といってバッタを与えた女が「あら!」と悲しむのをみて会心の笑みを漏らし給え。
更に又、君が一人ほかの子供と離れた叢で虫を探していた智慧を以てしたとしても、そうそう鈴虫はいるもんじゃない。君も亦バッタのような女を捕えて鈴虫だと思い込んでいることになるのであろう
そうして最後に、君の心が曇り傷ついたために真の鈴虫までがバッタに見え、バッタのみが世に充ち満ちているように思われる日が来るならば、その時こそは、今宵君の美しい提燈の緑の灯が少女の胸に描いた光の戯れを、君自身思いだすすべを持っていないことを残念に思うであろう
若干の変態さを感じますが、この文章は川端作品の中でも大好きな文章です。
男が少年から青年、そして大人になり生きていく中で色々な事が有り、世の中に対して思う事があるのでしょう。大人になると思った事でも言い出せず自分のなかでグッとこらえることもあり、ストレスや、疲労を感じ自分にとって本当に価値の有るものや、自分を本当に大切に思ってくれている存在を価値のないものだと誤って判断してしまう。
男は男の子にむけて言葉を綴っていますが、一方で自分自身にも投げかけているように感じます。
私🍏は年をとり社会を理解しはじめると、この男の言葉に共感するのと同時に男の子を羨ましくおもうようになりました。
今回川端康成の「バッタと鈴虫」について私🍏なりに、あらすじ、感想、そして解説をしてみました。
さきほども言った通り数ページの短い話ですし、アマゾンのオーディブルにもあるみたいなので是非この作品を実際に触れてみてください。
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