「タイタンの妖女」 太田光が大絶賛した物語:カート・ヴォネガット [感想][あらすじ][解説]  

読書

はじめに

今回は読書家で知られる爆笑問題の太田光さんが「今まで出会った中で最高の物語」と評価しているカート・ヴォネガットの書いた「タイタンの妖女」について私🍏なりに、あらすじ、感想、そして解説をしていきたいと思います。

私🍏も学生時代にこの本と出会いその面白さから、夢中でページをめくったのを覚えていますし、いまでも読み返すと心の底から「面白かった」と思える作品の一つです。

そんな「タイタンの妖女」について考えていきたいと思います。

タイタンの妖女のテーマ
芋粥
芋粥

人生の目的。意義について

「タイタンの妖女」はこんなひとにオススメ

・SF小説が好きな人、読みたい人

・人生の目的。意義について考えたい人

あらすじ

大富豪のマラカイ・コンスタントは時空を超えた存在であるラムファードに招かれ,将来地球を離れ火星で強制労働させられその後、水星・地球・タイタンに行くことになるという予言を受けます。

彼は予言通りにならないような行動を行いますが結局、火星人に拉致され記憶を消されアンクと名前を変え火星で強制労働をすることとなります。

その後ラムファードが起こした地球火星戦争が勃発し兵士として地球攻略するため宇宙船に乗り込みます。

しかし宇宙船はラムフォードにより地球ではなく水星に降り立ち3年水星で過ごした後「宇宙のさすらい人」として再び地球に戻った彼は、ラムファードの計画のもと新たなに造られた皆が平等であり、皆が平等にハンディキャップを背負うという宗教「徹底的に無関心な神の宗教」をより強固にするために富と権力を誤用した人間の象徴としてタイタンへ追放させられます。

ラムファードの目的

初めてこの本を読む人はこの時空を超えたラムファードの発言や行動を理解するのは難しいかもしれません。最初はとても嫌な人物にうつると思います。

彼は新たな宗教をつくり多くの地球人を幸せにするために約1.5万人の人間を騙して地球から火星に送り込み、負けると分かったうえで貧弱な装備を持たせ地球と戦争させ火星軍を破滅させます。

そしてコンスタントをまるで自分のオモチャのように利用し火星や・水星に飛ばします。非常にハチャメチャですが、時空を超え、未来に何が起こるのかを全て知っているラムファードだからこそ、多くの地球人を幸せにする最適な方法を彼なりに考えこれらを実行にうつしたのです。

徹底的に無関心な神の宗教

この宗教には神というのは人類に非常に無関心であり、なにか幸運な出来事が有ってもそこに神は介在しておらず、たまたまである。というのが軸にあります。

「神は私達人類を殺しもしない代わりに救いもしない存在である」

そのためこの宗教ではなにか幸運なことが有ると他人から、偶然の僥倖を非難されないようにハンディキャップを背負う事となります。

筋肉に優れたものは平等性を保つために重りを背負う。

容姿に優れたものはわざと醜い化粧を行う。

そのため皆が平等で他人と比較することなく、憎しみ会うこともなく幸せであると。

読んでいて非常に狂気な宗教だと思いましたが現代の運動会でもリレーの際に生徒が同時にゴールする学校もあるようです。

このような人工的に作られた平等はかえって不平等にしかみえません。

足の速い子にとってはせっかく自分が輝けるステージなのに平等にさせられる。実際に皆が平等になると狂気であり、それが人類の幸福には決して繋がりません。

人類にとって持つべき考えは、足の速い子を妬むのではなく、容姿の優れた人を妬むのではなく、他人が得た幸運を称賛する寛大な心です。

単時点的(パンクチュアル)について

ラムファードは作中において単時点的(パンクチュアル)という言葉を多く使います。人生は途方もなく長く、浮き沈みも激しい。その一点をみたら不幸で苦しいかもしれない、しかし“点”ではなく“線”でいまその出来事を見た時その出来事は決して不幸ではないかもしれない。

「単時点的(パンクチュアル)」という言葉を理解すると今が幸福とか不幸とか善とか悪とかそういった事が非常に小さなものに感じられます。

この物語では主人公のコンスタントだけではなくラムファードが設計したハチャメチャなレールにより多くの人の人生が狂わされます。

自分の人生が自分の意志ではなく、他人の意思によって決定されてしまうのは誰も嫌だと思います。


しかし戦争が終わり彼に人生を奪われた元火星軍のビーという女性のこのセリフは深いものがあります。「もし、わたしたちの人生が彼にじゃまされずそのままつづいていたとして、わたしたちにそれ以上のことができたかしら?」

コンスタントも富と権力から非常に欲深い生活を送り、誰かを心から愛したり、信頼する、という経験をしたことが有りませんでしたが、記憶を奪われると親友を作ったり、妻のビーを愛することができました。

おそらくラムファードの“邪魔”がなければ二人は今以上の人間になる事は出来なったと思います。

単時点的(パンクチュアル)ではラムファードの邪魔は残酷に見えるかもしれませんがこれを線でみると残酷ではなく神の導き手に見えてきます。

サロについて

この本に出てくる宇宙人。サロについてご紹介しましょう。

物語の終盤になるとラムファードも実はこのサロに操られている側であった事が分かります。

トラルファマドール星の機械であるサロは遠い昔に母星からある手紙を持たされ、それを遠い星に持っていき渡すというミッションが与えられていましたが、宇宙船が飛行中に故障しタイタンへ不時着します。

サロは本国に交換部品を求めるため通信を試みます。本国はその返信方法として地球人を利用しました。万里の長城。スイスの国際連盟本部ビルを上空からみるとトラルファマドール語となり、タイタンで遭しているサロを励ますような文章になっていたのです。

つまり、地球が起こり人類の長い文明の発展は全てトラルファマドール星人とサロが通信するただの文字起こしだったのです。

そしてラムファードの長い計画の最期はコンスタントとビーの間に生まれたクロノがその交換部品をサロに渡す計画だったので、ラムファードは勿論、長い歴史の中で生まれた地球人全てがこのトラルファマドール星人に利用されていたのです。

そして、そんな長い年月と人をかけて渡したい手紙の内容は「よろしく」の1単語のみでした。その事実を知ったサロは自殺してしまいます。

人生の目的

今回「タイタンの妖女」について私🍏なりに、あらすじ、感想、そして解説をしてみました。

サロの故郷であるトラルファマドール星は機械が支配している星ですが以前は違った生物が存在しており、彼らは常に何かしらの高尚な目的を持つために多くの時間を浪費していました。

そして高性能な機械を作り、高尚な目的を機械に探させますが、生物たちが何か目的を持っている事は考えにくいという結論をだし、それを聞いた生物たちは生物同士で殺し合いを行い滅亡します。

火星人・コンスタント・ラムファード・サロ・トラルファマドール星人、彼らの人生をみれば「人生に目的・意義」など持たないほうが幸せだと考えることが出来るかもしれません。

親の莫大な財産を譲り受け全米1の大富豪で何も不自由することがなかったコンスタント。

ラムファードの計画により記憶を消され火星で労働させられ水星に飛ばされ、最後はタイタンで余生をすごすなかでかれは最後にこのようなセリフを残します。

「人生の目的とは、どこのだれかが操っているにしろ、手近にいて愛されるのを待っているだれかを愛することだ」

今回ご紹介した記事を読んでも、あらすじを聞いても「よくわからないがハチャメチャな本だな」というのが正直な感想だと思います。しかし、大人が読んでも最高に面白いSF小説です。

読み物としても最高に面白く、そして色々と考えられる作品です。

是非この最高の物語を手に取って読んでみてください。

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