はじめに
今回はモームが描いたお菓子とビールについて私🍏なりに、あらすじ、感想、そして解説をしていきたいと思います。
この作品はある小説家と大作家との友情を描いたものです。
小説家であるアシェンダは青年時代に当時無名だったドリッフィールドと交流があった為、ドリッフィールドが亡くなると彼の伝記を描くために無名時代、彼がどのように過ごしていたかを教えて欲しいと夫人のエイミーから声をかけられるところから始まります。
私達の人生には出会いと別れが多くあり、仲が良くても多くが疎遠になっていきます。小説家と大作家の関係もその例に漏れず小説家が大人になると疎遠になっていきます。
長年連絡を取っていない友人と再び会うことは、気まずさと、恥ずかしさがありますが、この2人を見ていると何故かそんな様子は感じられません。
2人が多く語る様子もありませんが、2人にしか分からない独特の空気感が流れているのがこの本の特徴であり魅力だと思います。
これは外国人特有のものなのか分かりませんが、日本人にはあまり理解出来ない人間関係かもしれません
今回はそんな独特の友情を描いたお菓子とビールをご紹介致します。
お菓子とビールのポイントテーマ・魅力
・友情
・差別
「お菓子とビール」はこんな人におすすめ
・最近旧友と連絡を取っていない人
あらすじ
作家のアシェンデンは同じ小説家であるロイからドリッフィールドの伝記を書くことになったと聞かされる。
アシェンデンは青年時代にドリッフィールドと交流があったため、昔の彼がどんな人物だったのか教えて欲しいとたのまれる。
そこからアシェンデンは自分の過去を思い出しながら、ドリッフィールドとその前妻のロウジーのと思い出を思い出していく。
ドリッフィールド夫妻との関係
この作品はアシェンデンが自分の人生を回想しながら大作家のドリッフィールドと過ごした日々を思い出していきます。当時無名だったドリッフィールドはアシェンデンの暮らすブラックスタブルに越してきます。
厳格な牧師の叔父のもとで暮らしていたアシェンデンは、叔父からドリッフィールドとはあまり話すなといわれます。それは彼の一家が非国教徒であり、妻のロウジーは飲食店の女給であり、そして彼らと身分が違ったからです。
ですがたまたま彼が自転車の練習をしていると、同じく自転車の練習をしていたドリッフィールド夫妻と出会い、それがキッカケとなり交流が始まります。
厳格な叔父に育てられたのもありドリッフィールドの身分をわきまえない行動、言動に腹が立つこともありましたが、ドリッフィールドはそんな事を気にせずアシェンデンと接してきます。
また妻のロウジーも同様で彼女は女給時代店に来た多くのお客と関係をもった浮気女であり、それを周りに知られており非難されていますが気にせず誰とでも楽しそうにしゃべります。
たまに立腹することや違和感を持つことはありましたが、自由奔放なドリッフィールド夫妻との生活は青年時代の彼にとってかけがいのない時間となり、進学して街を離れても帰省したらまずはドリッフィールド夫妻に会うようになります。
ドリッフィールド夫妻の人間性
さきほどもご紹介した通りドリッフィールド夫妻は自由奔放であり周りの目や風習をきにしません。
さらにかれは多くの借金を抱えたままブラックスタブルの街から急にいなくなります。
普通の人であれば多くの借金を踏み倒した後ブラックスタブルの人たちとは気まずいのが当然ですが、アシェンデンと偶然ロンドンで再開しますがその時も悪いことをしたという認識はなく楽しそうに話しています。
また妻のロウジーの自由さは結婚後も変わることが無く、彼女は結婚後も浮気を繰り返していますが、夫のドリッフィールドはそれにたいし何かをいっている場面はありませんし、アシェンダとも関係も持つようになります。
また、ドリッフィールド夫妻の子供が無くなった時、2人は深い悲しみにおちいりますが、自宅に帰ったあとロウジーは男に会いに行っていますし、最後にはドリッフィールドを捨てて別の男性と駆け落ちしてしまいます。
ロウジーの行動をみると凄く嫌な女性に見えますし、後に再婚したエイミからはひどく非難されています。
ただこの本の語り手でもあるアシェンデンはロウジーを非難しているどころか、決して嫌な人物ではないと噂を否定しています。
これはロウジーと実際に会って話すと彼女の子どものような無邪気さ、素直さで悪さをされても許したくなってしまうのかもしれません。
夫のドリッフィールドも同様に作家として売れてからもエイミーに怒られながらブラックスタブルの汚い飲み屋で飲むのを好みました。
世間の目や風習を重んじるエイミーは彼のそのような自由さを直そうと必死でしたが、その自由さがドリッフィールドの魅力であり、この作品の魅力だと感じます。
ドリッフィールドとの再会
アシェンデンが大人になった後、ドリッフィールドと再会することになります。
その時ロウジーはすでに駆け落ちしておりドリッフィールドはエイミーと再婚して、小説家として確固たる地位にいました。
そこではエイミーによって“大小説家”として振舞うよう手懐けられたドリッフィールドがいました。そこでドリッフィールドはアシェンデンに
「あなたのようなお忙しい流行作家が、こんな老いぼれに会いに来てくださって嬉しいですな」と、
初めてあった人のように話しかけます
しかし、周りが誰も見ていない所で彼はアシェンダにウインクを送ります。
このシーンが私🍏はお菓子とビールの中で一番好きなシーンです。
作品の序盤で描かれているので読者はまだアシェンダとドリッフィールドとの過去を知らないのでただお茶目な老人程度にしか感じませんが、ページをめくるたびにアシェンダとドリッフィールドとの過去を理解していくとこのウインクのシーンが凄く深いものに感じます
最後に
今回はモームの書いたお菓子とビールについて私🍏なりに、あらすじ、感想、そして解説をしてみました。
物語という物語はありませんがアシェンダとドリッフィールドの独特な絆とモームの描く世界観に惹かれます。
他人からの目を気にせず後先考えず人生をおおいに楽しむドリッフィールドとロウジー、また厳格に生きるエイミーを比べて読むのも楽しいです。
ぜひ、この機会に一度手に取って読んでみてください
コメント