はじめに
今回は伊坂幸太郎の書いた短篇小説集、死神の精度について私🍏なりに、あらすじ、感想、そして解説をしていきたいと思います。
主人公は死神界の調査部として働いており、情報部から情報をもらった人間を調査し、その人間の生死を決めています。
主人公の死神に限らず、基本的に多くの死神が調査対象の人間の命を奪う「可」という判定を下し、極稀に命を奪わない「見送り」という判定を行います。
この本の魅力は私達にとっては見慣れた人間界の世界や死生観を死神視点で描かれているので、私達にとって一般的な考えが実は間違っているのではないかと、考えさせられる点だと思います。
また一話完結型の短篇集ではありながらも実は物語が繋がっているのではないかと、という伊坂幸太郎らしいレトリックもありページをめくる手がとまらない作品です。
死神の精度のポイントテーマ・魅力
・人間にとっての常識
・死生観
「死神の精度」はこんな人におすすめ
・普段あまり本を読まない人 ・死生観について考えたい人
あらすじ
調査部として働く死神は情報をもらった人間を8日間調査しその人間の生死を決めている。調査の結果ほとんどの人間が「可」という判断を下され命を奪われる。そんな調査部で働く主人公の千葉もある6人の情報をもらい人間界に派遣され調査を行う
人間にとっての常識
私達の大半が生きていくうえで1番恐れていることは、自分の死や自分の愛する人の死ではないでしょうか。
しかし、それはあくまでも人間の価値観であり死神にとっては当然ですが関係ありません。
主人公の千葉は対象の人間を調査しますが、その人間がどうなろうとこだわっていません。あくまで仕事上の形としてとりあえず調査しているだけです。
死生観だけでなく、6人の人間との会話のなかで死神の千葉は何故こんなにも人間はこだわって生きているのかを不思議にも思います。お金や体裁、恨み、恋愛、社会的地位。
私達にとっては非常に重要な要素ですが死神にとってはそれらにこだわるのが非常にあさはかにうつるようです。
突拍子もない千葉の言葉、考え方ですが時折ハッとされる場面があり私達の一般的な考え方は果たしてどうなんだろうと考え直す機会を与えてくれる本です
死神の精度
本のタイトルどおり、死神の精度はどうなのでしょうか。
身近な人が亡くなるたびに、私達は何故この人は死ななければならなかったのだろうか。と嘆き悲しみます。
死神から調査対象になるとほぼ「可」という判定を下だされ命を奪われます。対象とされた6人の人物をみても何故この人が選ばれてしまったのだろうかと思う人ばかりです。
人間の観点からみればこの″精度″は低いように思います。
千葉自身も何故この人間が選ばれたのかは知りません。
千葉は作品中1度だけ「可」ではなく「見送り」にしますがその理由は本当ささいなもので私達人間には理解できません。
あくまで小説の世界ですが私達の多くが自分の死や愛する人の死を1番に恐れています。
その生死を決める死神がこんなにもあいまいな理由で決めていると思うと怒りたくもなります。
ただ現実の世界でも急な交通事故で突然命を落とす人もいますのであながち間違いじゃないかもしれません。
悲しい死を乗り越えるのは並大抵の事ではありませんが死神の精度が低い以上考えようがないものとして切り替えるしかないかもしれません。
伊坂幸太郎はこの作品を通して私達が1番恐れている死について深く考えてもしょうが無い、というメッセージを送っているように私は感じました。
最後に
今回は伊坂幸太郎の描いた死神の精度について私🍏なりに、あらすじ、感想、そして解説をしてみました。
死神視点で人間界をみてみると色々な発見がある作品で、更に伊坂幸太郎のレトリックで最後まで面白く読める作品ですのでオススメの短編集です。
ぜひ一度手にとって読んでみてください
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