【永野芽郁×田中圭×石原さとみで映画化】『そして、バトンは渡された』感想・あらすじ・解説|本屋大賞受賞、”全然不幸ではない”家族の物語 ── 瀬尾まいこ

日本文学

はじめに

はじめに

「あなたにとって家族とは、血のつながりですか。それとも、一緒にいた時間ですか。」

そう問いかけてくる小説が、瀬尾まいこの『そして、バトンは渡された』です。

2019年本屋大賞・大賞受賞作。 そして2021年10月、永野芽郁×田中圭×石原さとみという豪華キャストで映画化されました。Source

主人公・森宮優子は、父親が3人、母親が2人という複雑な家庭環境で育ちました。

こう書くと、いかにも不幸な子供時代を送った女性の物語に聞こえます。私🍏も最初はそう思って読み始めました。

ところが、この小説はこう始まります。

「困った。全然不幸ではないのだ。」

冒頭のこの一文で、私🍏はもうやられました。**「不幸ではない」ではなく「困った、不幸ではないのだ」**なんです。周りが同情してくれるほどには自分は苦しんでいない、という優子の照れくささが、この一行にすべて詰まっています。

「そして、バトンは渡された」ポイントテーマ・魅力

芋粥
芋粥

・親子愛

・人生において自身が優先すべきもの

「そして、バトンは渡された」こういう人にオススメ

・映画を見て、原作が気になっている方

・家族との関係に、ちょっとだけ疲れている方

・「血のつながり=愛情」という前提を疑ってみたい方

・読み終わったあとに、じんわり温かくなる小説を探している方

あらすじ

主人公は森宮優子、17歳。

幼い頃に実の母を亡くし、実父・水戸秀平(みと しゅうへい) と暮らしていました。やがて秀平は梨花(りか) と再婚し、優子には新しい母ができます。

しかし秀平がブラジル転勤を機に梨花と離婚。優子は「日本に残る」ことを選び、血のつながらない梨花と二人暮らしを始めます。

やがて梨花は資産家の泉ヶ原茂雄 と再婚し、優子は大きな家でピアノを与えられて暮らします。ここまでで父2人、母1人。

さらに梨花は泉ヶ原と離婚し、20歳年下の森宮壮介 と再婚。そして——梨花は、優子と森宮の前から突然姿を消します。

こうして優子は、血のつながらない、しかも母より年下の男・森宮壮介 と暮らし始めることになります。

父3人、母2人。優子の中で、家族の形は目まぐるしく変わっていく。それでも彼女は「全然不幸ではない」と言い切ります。

「全然不幸ではない」と言い切れる強さ

この作品を読んで、私🍏が何度も驚かされたのは、優子の心の丈夫さです。

思春期に親が何度も変わるというのは、想像するだけで消耗します。ところが優子は、自分の環境について「かわいそう」「恵まれていない」といった弱音を一切吐きません。

高校3年の進路面談で、担任の先生から「悩みがあれば話すように」と言われたときの反応が、この小説のいちばん好きな場面のひとつです。

優子は、何も言うことがなくて逆に困ってしまう。

普通ならここで「実は複雑な家庭で……」と切り出す場面です。でも彼女は本当に困っていない。先生が用意してくれた「同情の椅子」に、優子は座ろうとしません。

私🍏はこの場面を読んで、はっとしました。

周りが「かわいそう」と思っている状況は、本人にとっての「かわいそう」ではないことがある。

これって、私たちの日常でもよくあることです。他人が「大変ですね」と言う場面で、自分は別に大変だと思っていない、という経験。あの微妙な居心地の悪さを、瀬尾まいこは優子の姿でそのまま描いています。

なぜ優子はそこまで強いのか

これは単に「性格が明るいから」ではありません。読み進めると、優子の強さの根拠がじわじわ見えてきます。

小学校時代、実父の秀平がブラジル転勤するとき、優子は「一緒に行く」か「日本に残る」かを選ばされます。まだ子供の彼女に、そんな大きな選択ができるはずもありません。

結局、優子は「今の友達と離れたくない」という理由で日本に残ります。ところが数年後、その大切だった友達とは年賀状を交わすだけの関係になっている。

この一節が、私🍏はとても好きです。

「大切なもの」は、時間とともに形を変える。

優子は早い段階でそれを知ってしまいました。だから高校で友人関係のトラブルに巻き込まれても、彼女はあまり動じません。「今、大切に見えるものが、10年後も大切だとは限らない」ということを、身をもって知っているからです。

これ、実は大人になった私たちの方が忘れがちなことです。目の前の人間関係のトラブルを、まるで永遠のことのように苦しんでしまう。優子の方が、よほど大人です。

優子が人生において優先するもの

それでは優子が人生において優先するものは一体なんなのでしょうか。

水戸修平と別れた梨子は優子と共に暮らしを始めますがズボラな梨子のせいで金銭的に厳しい生活を送りますが、梨子は優子の「ピアノがほしい」という願いを叶えるためお金持ちの泉ヶ原茂雄と再婚します。家は大きく、お手伝いさんも雇っている環境になり家事の手伝いもお金も心配しなくて良くなるのに加え大好きなピアノも与えられました。

その後梨子が泉ヶ原茂雄と離婚し森宮壮介と再婚しますが、梨子は急に優子と森宮壮介の前からいなくなり優子は森宮壮介と2人暮らしを続けます。

月日が経ち迎えた優子の結婚式当日。

3人の父親が式に列席しますが、バージンロードを優子と共に歩くのは実父の水戸修平ではなく森宮壮介でした。

バージンロードを歩く直前2人はこういう言葉を交わします

「最後の親だからバージンロード歩くの、俺に回ってきちゃったんだろう」と森宮壮介が言うと

優子は

「まさか。最後だからじゃないよ。森宮さんだけでしょ。ずっと変わらず父親でいてくれたのは。私が旅立つ場所も、この先戻れる場所も森宮さんのところしかないよ」

優子にとって人生で一番優先したのは友人でもなくお金でもなく、ずっと変わらずに自分の傍にいてくれる家族の愛だったのではないでしょうか。

経済的に余裕が有り懐の深い泉ヶ原茂雄と、変わり者の森宮壮介という父親からそれぞれ愛情を注がれる優子。

どの父親も優子を愛してはいましたが、変わらず自分の傍にいてくれた森宮壮介に優子は一番の愛情を感じたのではないでしょうか

小さい頃から何回も父親と母親が変わった優子だからこそこのセリフに重みがあるように感じますし、複雑な家庭環境で育ってきた優子だからこそ誰よりも家族愛について理解することが出来たのではないでしょうか。

最後に

今回「そして、バトンは渡された」について私🍏なりに、あらすじ、感想、そして解説をしてみました。

『そして、バトンは渡された』は、家族の物語であると同時に、**「幸せの定義は、他人が決めるものではない」**という物語です。

父3人、母2人。他人から見れば波乱万丈の人生を、優子は「全然不幸ではない」と言い切ります。それは強がりでも、諦めでもありません。自分にとっての幸せを、自分で定義できる人だけが持てる強さです。

私🍏はこの本を読んだあと、しばらく「自分にとっての家族って何だろう」と考えました。

血のつながりでもなく、同居しているかどうかでもなく。変わらずそこにいてくれる人こそが、家族なのかもしれません。

生活環境が大きく変わろうとしている方、大切な人との関係を見つめ直したい方、そして映画を見て「泣けた」と感じた方——ぜひこの原作を手に取ってみてください。

読み終わったあと、あなたの中で「家族」という言葉の意味が、少しだけ変わっているはずです。

また、女優の上白石萌音さんが解説を入れていますが本に対する真っ直ぐな愛が伝わってきて非常に良かったと思いますし、それほど愛される作品だと感じました。

新生活などで自分の生活環境が大きく変わろうとしている人に是非読んでほしい1冊です。

瀬尾まいこの「そして、バトンは渡された」をアマゾンのAudibleで聞いてみてください

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