「坊ちゃん」~ユーモラスでありながら人生の核心をついた一冊:夏目漱石 「感想」「あらすじ」「解説」

読書

はじめに

日本を代表する文豪、夏目漱石。

彼がこの世を去り100年以上たちますが、彼が残した作品は現代においても、いまだに愛され続けており、今日を生きる私達に手助けとなるヒントを与えてくれます。

今回はそんな彼の作品のなかでも「坊ちゃん」について私🍏なりに、あらすじ、感想、そして解説をしていきたいと思います。

この作品は東京で学問を終えた一人の男が愛媛に中学校教師として赴任しそこで都会と田舎の生活の違いや、狭い世界だからこその人間関係に悩まされる様子がユーモラスな文体で描かれています。

夏目漱石作品の中でも難しい単語も少なく非常に読みやすい作品だと思いますので漱石作品に触れたことがない方も入門としてオススメの一冊です

内容はユーモラスで読みやすいですが、単に読みやすいだけでなく人間社会の難しさを描いている深い作品でもあります

関連記事:「こころ」の記事はこちら

関連記事:「それから」の記事はこちら

坊ちゃんのポイントテーマ・魅力
芋粥
芋粥

人間の陰湿さ

都会と田舎

「坊ちゃん」はこんな人におすすめ

・楽しい気持ちになりたい人
・夏目漱石作品にあまり触れた子が無い人

あらすじ

東京の物理学校を卒業した男は四国の愛媛に中学校の数学教師として赴任する。彼の性格は正義感が強く曲がった事が嫌いな男で教師生活の中でずる賢い生徒や教師に騙され、田舎暮らしに苦戦する。

そんな中、裏で悪事を働いている教頭が同僚の教師の婚約者を奪おうとしている事を知り同じ数学教師の山嵐と協力して教頭に天誅くだす

人間の陰湿さ

中学校教師として勤務すると男は田舎独特の狭い世界や風習に男はウンザリしていきます。

学校帰りに天麩羅蕎麦や団子を食べた翌日の朝教室に行くと、黒板に「天麩羅先生」や「団子2皿7銭」と揶揄した文字が書かれ、狭い田舎だからこそ筒抜けの世界に嫌気がさしてきます。

今まで都会で暮らして来た男にとって田舎独特の陰湿でジメジメした人間関係は理解しにくいものがあるのでしょう。

このように坊っちゃんでは田舎暮らしをしている人間に対して男が腹を立てている場面が多くあります。

が、田舎、都会に限らず人間という動物は誰かの噂というのに強い興味を持つ動物なんだと思いますが、狭い田舎ゆえに誰かの噂が広がりやすくなってしまうのではないでしょうか

田舎の風習に腹をたてながらもユーモラスな文体で物語が綴られているので読んでいると楽しい本に感じますが、その奥に坊っちゃんの重要なテーマである人間の陰湿さというのが描かれているので、ただ面白可笑しい本ではなく、夏目漱石が坊っちゃんで描きたかった所を理解しながら読むと坊っちゃんがより一層興味深い本になると思います。

坊ちゃんは悪に勝利したのか

物語終盤で男は悪事を働く教頭を山嵐と協力して天誅を下します。

悪事を働いていた悪人を善人がやっつけてスカッとして物語が終わっているように感じますが、その後どうなったかまで読むと、決して善が勝ったようには感じません。

善人側の男と山嵐は教師を辞めて、男は東京で電車関係の仕事につきますが月給は40円から25円に下がってしまいます。

一方悪人の教頭は引続き田舎の中学校で教頭という強いポジションで自分がやりたいように生活を送り悪事を続けていくことになりますし、結果邪魔ものいなくなったので婚約者を奪う事になると思います。

この事実をふまえる善人が勝利したとは言えないかもしれません。

坊ちゃん

人がいったことを何でも信じる、純粋で素直な男を見て悪人の教頭は男を軽蔑して笑っています。

その一方で教頭は学校で生徒に素直で純粋であることを求めて子供の教育を行っています。

そして教頭自身の生活はというと素直とは逆で自分の欲を満たすために他人を平気でおとしめたりもします。

タイトルでもある坊っちゃんという単語は素直で純粋な人物というのを意味していると思いますが、社会に出た時に本来は美徳であるはずの素直、純粋という性質が社会に出ると悪人がはびこっているせいで、隅に追いやられてしまっているやるせない構図がこの坊っちゃんでは描かれています。

夏目漱石はこの作品で、世間では善人が馬鹿を見て悪人が良い思いをしているというやるせなさを表現したかったのではないでしょうか

清の存在

説明した通り坊っちゃんという作品は一見面白可笑しい内容ですが、奥に進むと人間の汚い部分が表現されており、世間に対してやるせない気持ちを感じてしまいます。

しかし、清という登場人物により人間社会も悪くない、美しいなと思わせてくれます。

清は主人公の男の家で古くから下女として働いており、男はこの清に可愛がられて育てられていました。実の親も自分の事を褒めてはくれませんでしたが清だけは男がいつか偉い人物になるに違いないと根拠のない自信を持っており、男の父親が亡くなり家を売却した時も、男に早く自分を下女として雇ってくれと懇願しています。

世間ではずる賢い人間がはびこり、善人が隅に追いやられていますが、この清のお陰で救われる気持ちになります。

私達の生活も同じで会社、学校、バイト先。嫌な人、苦手な人が必ず1人はいると思います。そしてそういう人が周りから評価され強いポジションにいると世間に対しやるせない気持が芽生えるのは当然だと思います。

しかし、嫌な人、苦手な人がいると同時に清のようにまっすぐに自分を支えてくれる人も1人はいる、という事を忘れてはいけないのではないでしょうか。

人生に対してやるせなさを感じたとしても清のような美しい心もった人物がいると、とても心強いですし生きる活力になります。

坊ちゃんでは人間の陰湿さが描かれているからこそ、この清の美しさがひかります。

最後に

今回夏目漱石の坊っちゃんについて私🍏なりに、あらすじ、感想、そして解説をしてみました。

夏目漱石作品の中でも読みやすい作品なので夏目漱石の作品に今まであまり触れた古都がない方でもオススメの一冊です。

今回説明した通り、ただ読みやすいだけではなく、人間の陰湿さ、、狡猾さというのも描かれているので、読みやすいだけでなく深い物語になっているので、読んだことがある人もこの機会に改めて手にとって読んでみてください。

夏目漱石の「坊ちゃん」をアマゾンのAudibleで聞いてみてください

コメント

  1. VF-21 より:

    んー、本当にそうかなぁ?子供の頃に読んだけれど何が良いのか?(今でも)全く理解できない。
    東京の人はこの作品が大好きみたいだが、何となく西日本では受けが悪く感じていた。
    会社勤めをやっていた頃、同僚の大阪出身者が同じくこの作品で感想文を書け。という課題が
    あり、結果、主人公の出鱈目さに飽きれ、「こんなのただの暴力教師だろ?」と書いて提出したと
    いう。その時、長年何かモヤモヤしていたこの作品に対する疑問がすべて解けたと感じた。
    そう、あまりにも内容がくだらなく正義の元でふるわれる暴力は肯定されて然るべきという
    あまりにも馬鹿げている事が心に引っ掛かっていたのだと判った瞬間だった。強すぎる正義感は
    何も生み出さず、周りに迷惑をかけて不幸をばらまくだけだ。それは昨今、正義を標榜し私人
    逮捕を生業にしている連中を見ればよく判る。彼等は正義感ではなく金儲けでやっているのは
    重々承知だが、一歩間違えると法を逸脱しても正義の名の元にふるわれる暴力を肯定したり支持
    する人間もいるという事は注意すべきだし、そういった意味でも「坊っちゃんって、何が良いの?」
    という疑問を持つ人間が一定数いるべきだと思うし、批判せず絶賛ばかりする書評には危機感
    すら感じる。もっと言うならこの主人公に正義感なぞ無く、ただ私怨を晴らすためだけに教頭を
    殴ったのだとしたらさらに始末が悪い。書評家や学校の教師に、こういった目線で物を見る事を
    語りかける人がいないというのも断片的な物の見方しか出来ない人間を量産しているだけの様に感じる。いい加減、カビが生えたような作品よりも現代社会に沿った良質な作品を探して紹介
    したり、教育教材に選ぶ時代じゃないかと思うのだが。

  2. 三浦 綱太 より:

    修善寺の大患以後、漱石の筆は深くなったし、冴えていると思います。

タイトルとURLをコピーしました