「シッダールタ」~人生における回り道ほど有益なものはない~ :ヘルマン・ヘッセ [感想][あらすじ][解説]

読書

シッダールタのテーマ

今回はヘルマン・ヘッセの「シッダールタ」について書きたいと思います。

ヘッセといえば「車輪の下」や「少年の日の思い出」が有名な作家です。特に「少年の日の思い出」は国語の教科書に載っていたのでヘッセという名前はおぼえていなくても、ヘッセの文章を読んだことがあるという方は多いと思います。

そして今回ご紹介するこの本は、一人の人間の一生を通して人生とは何かという事を追及した本です

宗教的な本で理解しにくい所もありますが、ヘッセの描く文章の美しさを通して主人公である「シッダールタ」の人生を眺めていると「人生にとって、自分にとって本当に大切にすべきものは何か」という事を考える甘美な時間を我々に与えてくれます。

シッダールタのテーマ
芋粥
芋粥

人生にとって、自分にとって本当に大切にすべきものは何か

シッダールタはこんな人にオススメ

「人生にとって、自分にとって本当に大切にすべきものは何か」

このようなテーマからこの本はこのような人達にオススメなのではないかと思います。

・人生において何を大切にすべきなのか迷っている人

人生は悩みの連続です。忙しい現代社会では悩んでいる時間すらないという人も多いかもしれません。そういう人こそ走るのを辞めゆっくりこの本を読み、シッダールタの人生を眺めながら自分の人生を見つめなおす時間を設けて欲しいように思います。

あらすじ

最高位の僧侶、バラモンの子として生まれたシッダールタは生まれながらに秀才であり友人にも恵まれなに不自由のない生活を送っていましたが、彼の心には常に知と精神的な渇きがありました。

賢いバラモン達から話を聞いてもその渇きが満たされることはなく、聖典に書かれた「なんじの魂は全世界なり」という句に惹かれ自我の中の源泉を見出し、それを自分の中にしなければならないと考えた少年シッダールタは、街を飛び出し親友であるゴーヴィンダと共に苦行者と生活を共にします。

そこからシッダールタの自我の源泉を見つける長い旅が始まります。苦行者のもとではこれ以上得れるものが無いと判断したシッダールタは転々と場所を変え生活を送っていきます。仏陀とあった時には彼の思想・立ち振る舞いには感銘を受けながらも悟りとは人から教えられるものではないと考えたシッダールタは友人であるゴーヴィンダを置いて旅を続けます。

その後は遊女と人生を共にし、時には商人として商売を行い世俗に染まった生活を送りますが、最終的に彼は渡し船の船頭として生活を送ります。そして時間に左右される事なく流れていく川をみているうちに、自身の人生を省み、気付けば全ての人を愛せる境地に彼はたどり着きます。

シッダールタの変化

ここからは私🍏がこの本を読んで個人的に思ったことを書いていきたいと思います。

この本のテーマは冒頭にも書いた通り「人生にとって、自分にとって本当に大切にすべきものは何か」だと思います。そして物語を通してシッダールタが人生において大切にしている哲学・考え方が変化している所がこの作品において重要な点だと思います。

ここからは年代毎に彼の哲学を紹介していきたいと思います。

①少年時代-青年

若い頃のシッダールタは育ちも良く、能力も高いことからどこか他人を軽蔑しているような部分が見られます。人間の本能的な欲や所業を単純で馬鹿げたものとして見下し、知に渇き精神に渇いていた彼はそれらを極めるために、苦行者と生活を共にします。更なる精神の高みに行く為の教えを得ようと仏陀のもとに向かいますが、他人からの言葉ではなく自身の体験こそが重要であると考えたシッダールタは子にならず仏陀のもとを離れます。最も賢いとされる仏陀からも離れた彼は自分自身の探求、内面的探究にこそ全てであると気付きます。

シッダールタのセリフにこのようなものがあります。

「大多数の人間は、散り落ちる葉に似ています。
風に吹かれ、空中に舞い、ひらひらとよろめいて大地に落ちます。ほかに少数ながら星に似ている人がいます。固定した軌道を進み、どんな風にもとらえられません。自分自身の中に法則と軌道をもっています」

このセリフはシッダールタ青年の師を持たず自分自身で考え生き抜くという強い気持ちが表れているセリフだと思います。

②青年-壮年

仏陀のもとを離れた彼は遊女カマーラの所に身を寄せます。今までの彼には欲といえば知的欲求しかありませんでしたが、彼はカマーラのもとで愛欲におぼれます。カマーラの傍にいるために禁欲的だった生活を捨て去り商売人となり若い頃に軽蔑していたような生活を送るようになります。結果的に彼はお金持ちになり、豪勢な生活を送りますが心の奥底でこの欲にまみれた生活に対し不快さを感じ続けていました。そして同時にこのようなお金の損得一つで一喜一憂する生活を心の底から送ることが出来る彼等を羨み、そしれ軽蔑していました。

③壮年-老年

しかし時は流れシッダールタもお金の病に取りつかれていきます。以前はお金を儲けることは遊戯程度にしかみてなくそれで一喜一憂することはありませんでしたが、お金の病に取りつかれた彼は、賭博を行い大きなお金を得たり失ったりして不安感を大きくしたり小さくして、富を失えば債務者に強く当たりさらなる富を得ようと生きるようになりました。あるとき彼はいつものように身体からでる酒気に吐き気をおぼえながら庭に降りて自分の人生を省みることにしました。周囲からは認められているものの、知への渇きは満たされる事なく場所を転々とした青年時代。それから欲にまみれた今の生活。この無意味な生活は自分に何を与えてくれるのか。自分に自問自答し結局この世俗にまみれてみても満たされることがなく、結局のところこのお金儲けも自分にとっては演技をしていたに過ぎないのではないかと。彼はこのことを悟り、お金も地位も捨て街を飛び出します。

④老年ー渡し守

遊女カマーラに身を寄せていた頃、カマーラに何が出来るのかと尋ねられた時彼は「考える事・待つ事・断食する事」が出来ると答えていましたが、欲にまみれた彼はそれとは真逆になっていました。そんな自分に対してに死を求めるまでに強い自己嫌悪を抱いた彼は川に飛び込み溺れ死のうとした時、若い頃暗唱していた聖句がふと脳裏にあらわれ、彼は我にかえり自分のこの奇妙な人生を振り返ります。厳しい修行に耐え禁欲的に生きた少年ー青年時代。そして欲にまみれた壮年ー老年時代。若い頃とは真逆な生き方を選び、それはまるで大きく回り道を歩きながら大人から子供に戻ってしまったような生き方。

しかし彼はその回り道を通って良かったと思う事が出来ました。

「知る必要のあることを全て自分で味わうのは、よいことだ」と彼は考えた。「世俗の喜びと富とが善いものではないことは、自分は子どものときにもう学んだ。それは久しい前から知っていたが、体験したのは今はじめてだった。今自分はそれを知っている。記憶でしるだけでなく、自分の目で、心で、胃で知っている。自分がそれを知ったのは、しあわせだ」

司祭の中でも階級の高いバラモンの子として生まれ、周りより能力も高く自負に満ちていたその知が彼の自我に根をおろし、苦行者のもとで自我を殺そうとした。そして自分の中の神聖な司祭を殺す為に世俗にまみれ、死を求めるほどの自己嫌悪におちいる必要があったと。自我を殺す為には堕落した生活の無意味さに耐え絶望に達し禁欲な若いシッダールタと放蕩者のシッダールタを殺す必要があったと彼は考えました。そして生まれ変わろうと渡し守であるヴァズデーヴァと一緒に生活を始めます。

彼は川を眺め静かな心で、何も望まず、執着せず生きる事を学び、男女・軍人・商人。すべての人に対し心から同情し愛せるようになります。

シッダールタを読んで考えれること

さきほど書いた通り作品を通してシッダールタの哲学は変わっていきます。意識の高い青年時代から打って変わって欲にまみれた壮年時代。そこから全てを失い渡し守となり人生にこだわりを持たず達観し、生きるようになります。過去の努力や経験は無駄だったかもしれない。しかし自分には必要だったかもしれない。私🍏はこの本を読んでシッダールタ同様自分の人生を振るかえってみると、挫折や失敗が多かったように思います。多くの人が大なり小なり挫折や失敗はあると思います。思い出したくもない過去もあるかもしれません。しかし、今こうして世界で一番幸せとはいえないかもしれないけれど、今日こうして生きている、今の自分がいるのは自分がこれまで生きてきた回り道のお陰だと、むしろ回り道をしてきたからこそ今の自分の考え方、哲学が形成されたのではにでしょうか。綺麗に塗装され歩きやすく真っ直ぐな道よりも、ボコボコで歩きにくい曲がりくねった道こそが人生で、そういう道を歩くからこそ視野が広がり誰かに対して優しく出来たりもするのではないでしょうか。

私🍏はこの本のテーマとして

・人生にとって、自分にとって本当に大切にすべきものは何か

というテーマを挙げさせてもらいました。

この本を読むと過去の失敗や挫折を愛することができ、人生に悩むことで自分の哲学が変化することへの不安が和らぐ気がします。

人生悩んだっていいし、回り道をして時間を無駄にしたとしてもそれは自分にとって必要経費だっと思えたら自分の人生を愛せるのではないでしょうか。

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